「子どもの車内置き去り実態調査2023」結果を公表

車内置き去りの危険性認知広がるも当事者意識に課題、さらなる啓発活動の必要性が浮き彫りに

三洋貿易株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社⾧:新谷 正伸、以下「三洋貿易」)は、子どもの車内置き去り事故を防止する取り組みの一つとして、「子どもの車内置き去り実態調査2023」を昨年に続き実施しました。2023年5月末~6月初めに、幼稚園・保育園で送迎を担当する267名と、全国の小学生以下の子どもを乗せて車を運転するドライバー3,377名を対象に車内置き去りの実態、危険性の認識、行動の変化などについてオンラインで調査を行いました。

三洋貿易は、自動車向けセンサーで高い世界シェアを誇るIEE S.A(以下「IEE」)社の車用子ども置き去り検知システムLiDAS™(ライダス)およびVitaSense™(バイタセンス)を提供しています。子どもの車内置き去りによる熱中症事故は仕組みによって防ぐことが可能な事象であるという考えのもと、システムの提供に加え、この社会課題への人々の意識と行動の変化を調査することで、解決に向けた問題提起を行っています。

■「子どもの車内置き去り実態調査2023」調査結果概要

<幼稚園・保育園の送迎バス編>

  • 幼稚園・保育園送迎担当の95.9%が、車内置き去りにより、毎年のように子どもの熱中症事故が発生していることを認識。
  • 「1年以内に子どもだけを残して送迎バスを離れた経験がある」との回答は1.5%まで減少。
  • 54.3%が「今後も園児が取り残されることは発生すると思う」と回答。ただし、76.0%が「自分の園では発生しないと思う」とし、危機感と当事者意識のギャップが明らかに。
  • 安全装置の設置義務化には「賛成」が84.3%と「反対」の3.7%を大きく上回る。

<子どもを乗せる乗用車運転者編>

  • ドライバーの91.6%が、車内置き去りにより毎年のように子どもの熱中症事故が発生していることを認識。
  • 1年以内に子どもを残したまま車を離れたことがあるとした人は20.4%。うち、5.1%は、めまい、顔のほてり、体温が高いなどの子どもの不調を経験。
  • 80.8%が今後も子どもの車内取り残しは発生すると回答。最多理由は、保護者の意識が低いからで60.5%。
  • 78.9%が子どもを無意識に車内へ取り残してしまうことに対する対策を行ったことはないと回答。
  • 車内置き去り検知システムへの認知は昨年より高まるも、45.8%が知らないと回答。

■調査で明らかになった課題と、解決に向けた提言

車内置き去りによる熱中症事故への認知は9割超と高い状態にあります。置き去り防止安全装置の設置が義務化された送迎バスでは、「1年以内に子どもだけを残して送迎バスを離れた経験がある」との回答は1.5%まで減少しました。こうした中で、「今後も園児が取り残されることは発生すると思う」は5割強にのぼりました。ただし、「自分の園では発生しない」との考えが8割弱で、自分だけは大丈夫との意識を変えるのには時間がかかることが伺えました。

乗用車ドライバーでも車内置き去りによる危険性は広く認識されていましたが、8割弱が無意識の置き去りを防止する対策をとったことがないとし、危険性の認識と実際の行動には大きな隔たりがあることが明らかになりました。置き去り検知システムへの認知が半数強にとどまっていることなどから、置き去り防止手法の啓発と、安全装置へのより簡単なアクセスが必要と考えられます。

無意識または予想困難な状況で起こる人的過失を補完できるようシステムを活用することは、人口減少が続く日本においては欠かせません。三洋貿易は、乗用車、送迎バスを問わず、ヒューマンエラーによる子どもの車内置き去りを防ぐため、自動検知式安全装置の普及を推進しています。テクノロジーの活用で防止できる事故を放置せず、誰ひとり取り残さない社会を実現するため、精度と信頼性の高い置き去り検知システムの迅速な提供に取り組み、健康で安心・快適な暮らしの実現に貢献してまいります。

■有識者からのコメント

NPO法人Safe Kids Japan 理事長 山中龍宏先生

子どもの車内置き去りによる熱中症事故に関する議論は、2022年9月以降大きな進展を見せました。保育施設などの送迎バスへの安全装置設置が義務化され、更に子どもに限らず熱中症の死者数を減らすことを目指す熱中症対策を盛り込んだ実行計画が閣議決定されるなど、日本社会全体で熱中症事故に対する認識が高まっていると感じます。

本調査からも、意識しないままに自分の子どもを車内に忘れてしまうことや、車内への置き去りを防ぐための安全装置があることなど、車内置き去りによる熱中症の危険性がある程度知られるようになっていることが分かりました。しかし認知が拡大したにもかかわらず、多くの人が依然として自分の身には起こらないと考えていることも読み取れる結果となりました。

私はこれまで30年以上、子どもの事故予防の啓発に取り組んできましたが、この「自分だけは大丈夫」という考え方は、車内置き去りのみならず、あらゆる事故において共通しています。大きな事故が起こり話題になっても、人はほんの数年間しか覚えていることができません。また、保護者にとって子どもが小さく注意が必要な期間もそう長くはないために、子どもが成長すれば事故の危険性を忘れてしまいます。

だからこそ、保護者や保育者の注意を促すのみでは子どもの事故を完全になくすことはできません。人の不注意や無責任を非難することに終始せず、「人は誰でも間違う」という考え方に基づいて、社会や企業が基準づくりや製品開発を行い、事故が起きないように仕組み化することが重要です。子どもの車内置き去りによる熱中症に関しては、送迎バスへの安全装置設置に続いて、圧倒的に台数が多い自家用車における対策強化も望まれます。

山中龍宏(やまなか・たつひろ)先生プロフィール
東京大学医学部を卒業後、同大学医学部小児科講師、焼津市立総合病院小児科科長などを歴任し、現在は緑園こどもクリニックの院長。『保育・教育施設における事故予防の実践』(日本法規出版)、『子どもの誤飲・事故を防ぐ本』(三省堂)など著書多数。

■調査結果詳細 「子どもの車内置き去り実態調査2023」結果を公表(PDF)

<幼稚園・保育園の送迎バス編>

1. 園児の車内置き去りに対する認識と実態

送迎バス担当者において、園児の車内放置による熱中症が毎年のように発生していることを知っているとした人は95.9%にのぼりました(昨年度95.5%)。また、過去1年間に「子どもだけを送迎バスに残して車を離れたことがある」としたのはわずか1.5%で、昨年度の5.6%から減少し、施設側の意識の高まりが感じられる結果となりました。

2.認識と行動のギャップ

「車内に園児だけが残されることは、今後も発生すると思いますか」という質問に対しては、54.3%が「今後も発生する」(今後さらに増加+少しは増加+今と変わらないくらい発生)とし、「減る」(少しずつ減る+今後減っていく)の45.7%を上回りました。

「車内に園児だけが残されることは、なぜ起こると思いますか」という質問に対しては、「送迎担当者や職員の意識が低いから」が昨年度から10.1ポイント減少し56.6%となりました。また、「人手不足だから」、「業務過多だから」、「登園確認等のルールが形骸化しているから」は昨年度からそれほど大きな変化がなく、それぞれ49.1%、42.3%、41.9%となりました。

「あなたの勤務する園で、無意識のうちに車内に園児が取り残されることが発生すると思いますか」という質問に対しては、「発生しないと思う」が76.0%、「発生すると思う」は24.0%にとどまり、自分の園では大丈夫と考える人が多くを占めることが明らかになりました。

3. 送迎バスへの置き去り防止安全装置の設置義務化への認識

安全装置の設置義務化には「賛成」が84.3%と「反対」の3.7%を大きく上回りました(12.0%は「どちらでもない」)。

設置義務化で現場にどのような影響があるかたずねたところ、「保護者の安心感につながる」が64.0%、「園児の安全が守られる」は59.6%となりました。また、職員や運転手の負担増を上げた人も23.2%いました。設置が進み、使用体験が増えることで、これらの傾向にどのような変化があるかが注目されます。

置き去り防止安全装置について最も重要視していることでは、「子どもを確実に検知できるか」が51.7%を占め、車内の見回りを促す性能や価格といった他の理由を大きく上回って、重視しされていることが示されました。

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